実 印(個人用)

役所で印鑑証明をもらえる印鑑です。契約や相続といった人生の大事な節目に使用します。
役所に登録するためにいくつかの決まり事があります。

実印の印影

① 彫るのはフルネーム

 実印の場合、かなりの割合でフルネームが多いです。
 誰とも共用はできず、必ずひとり1本持つ印鑑であること、個人の意思を公的に証明する最も重要な印鑑であることから、姓・名のフルネームで彫ることが良いと思われます。

 これは慣習的なもなので、法的には苗字だけや下の名前だけの印鑑でも問題はありません。近い将来苗字が変わる見込みがあるような場合には、作り直さなくてもいいように下の名前だけ作ることもあります。

てん書体
印相体

② 書体は「てん書体」か「印相体」で縦彫り

 書体にきまりはないのですが、古い書体で比較的読みにくく複雑な「てん書体」か「印相体」が選ばれることが多いようです。
 「印相体」は文字同士がどこかの画でつながり、枠にも必ず接しているように「てん書体」からアレンジしてデザインされた印鑑用の書体です。

 配列はフルネームの場合2行の縦彫りです。苗字か下の名前だけで彫る場合も1行の縦彫りになります。

印鑑の材質

 印鑑の材質には柘・杉などの木質系と、動物の角や牙などの動物系、水晶やパワースト-ン、青田石などの石材系、アクリルやラクト・琥珀などの樹脂系、そしてチタン・ジェラルミンなどの金属系があります。

 印鑑には、「摩耗しにくく(硬さ)、欠けにくく(粘り)、朱肉が付きやすく(捺印性)、かつ朱肉の油分に負けない(耐油性)材質」が求められます。
 下は材質毎のおおまかな性質の比較表です。

印材の比較
  動物系 木質系 石材系 樹脂系 金属系
 

牛角・黒水牛

柘・サイカ

 パワーストーン     アクリル・ラクト等   チタン 
硬 さ ◎ 
粘 り × ◎ 
捺印性 ◎ 
耐油性 × ◎ 

 捺印性は、石材ならば濃度の高い印泥を使用するなど、印材と相性の良い朱肉を使用することでより良くすることができます。
 耐油性は使用後に印面に残った朱肉をこまめにふき取ることにより補えます。
 同じ系列でも印材それぞれに特徴があり、木質系でもサイカなど加工によって動物系に匹敵する硬さをもつものもあります。

 実印の推奨印材は耐久性・捺印性から、金属または角・牙系となります。
 色・柄などデザインとともに印材を選ばれる際参考にしてください。

印鑑の形状

① 印鑑全体の形

 印鑑の形は大きく分けて、丸棒寸胴といわれるくびれのない形と、天丸天角といわれる中央が細くくびれた形のもの、その他には割印専用とされる形があります。

 一般的に個人用には丸棒、法人用には天丸・天角が多いのですが、天丸印は押しやすい形なので個人印としてもお勧めです。 

丸 棒
角 棒
天 丸
天 角
ミニ天丸

 長さは約6センチが標準で、最も押しやすく、対応するケースも豊富です。
 昔は4.5センチ位の短い印鑑もありましたが今では珍しくなりました。丸棒型は短いと押すときに力を入れにくくなるため、あまり短いものはお勧めできません。

 ミニ天丸と呼ばれる天丸型の短いものならば、胴がくびれているため短くても力を入れやすく、アタリが付いて印面の向きもわかるので、まっすぐくっきりと押しやすい印鑑です

 当店では個人用の印鑑として天丸型も選択できるよう提案しています。
 

② 印面の形

 割印を除いた印面の形状は丸印角印に分かれ、丸印には小判印など正円でない形もあります。角印は美術用の落款印などを除くと、正方形が多数を占めます。

 実印の大きさには規定があります。自治体によって多少の前後はありますが、一般的に『直径8㎜以上25㎜以内の正方形に収まるもの』とされ、この範囲に収まるならば小判形や長方形などでも登録可能です。

 とはいえ、実際には「直径15㎜~18㎜程度の丸印」が実印には圧倒的に多いです。

 ちょっと変わった形の印鑑も楽しいのですが、その場合印鑑ケースにあまり選択肢がなくなってしまうのが難です。 当店では、印鑑の形状は一般的な丸印か角印でありながら、印影の枠で遊べるように、様々な飾り枠もご用意していますが、実印の場合は飾り枠で登録が可能かあらかじめご自治体へご確認をお願い致します。

彫  刻  法

 印鑑の彫刻法は、完全手彫り手彫り手仕上げ機械彫りに分けられます。
 印鑑の製造工程には16あり、その中で主要な3つの工程(字入れ・荒彫り・仕上げ)をどの程度手仕事で行うかによってどの彫刻法に相当するかが決まります。

 「荒彫り」とは、文字の線に影響しない余白部分を彫る工程です。そのため、実際に印影となる文字を書く「字入れ」と、文字の線を彫って完成させる「仕上げ」が印影に大きく影響します。

 〇完全手彫り・・・全行程手仕事
 〇手彫り・・・・・荒彫り工程のみ機器使用 
 〇手仕上げ・・・・荒彫り工程に機器使用、字入れは主に既存の書体を全面手修正
 〇機械彫り・・・・荒彫り、仕上げ工程に機器使用、字入れは既製書体の組み合せ

彫刻法の手仕事割合
  完全手彫 手  彫  り 手仕上げ 機械彫り
字入れ
(印影となる文字を彫る)

×
荒彫り
(余白をおおまかに彫る)
× ×
仕上げ
(文字を彫り整える)
×

        (〇:全行程手仕事、△:一部機器使用、×:主に機器使用) 

※ 当店では彫刻法を「完全手彫り」、「手彫り」、「手仕上げ」から選んでいただけます。
 「完全手彫り」、「手彫り」共に、印章彫刻技能士1級及び、伝統工芸士の国家資格を持つ職人の手によるものです。